建築施工管理の納め方、ディティールを学ぶための書籍はたくさんあるのですが
店舗系の施工管理者が読むための書籍は皆無です
これは私が知っている知識をまとめるしかない。ちょっとした使命感でこの記事を作っています
これから店舗の施工管理として頑張る方や
先輩の方々にも共感していただけるのではないでしょうか
今回は不完全な設計図書のまま行われる入札について書いてみました
ご一読いただけると幸いです
見積書の「一式」、その正体とは
店舗内装工事の見積書を見ると、なぜか「一式」という表記がやたらと目につく。
そう感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
「一式」が増える理由は、施工会社が悪意を持って中身をぼかしているからではありません。
多くの場合、その根本には「見積もりの精度を出せるレベルに達していない、
不完全な設計図書のまま入札(相見積もり)を開催する」という業界の慣習があります。
図面がスカスカの状態で「とりあえず金額を出してほしい」と言われたとき、
現場の施工管理者はどんなリスクを抱え、どうやって自分の身を守っているのか。

とりあえずでいいからさっ!
金額教えてよ
今回はそのリアルを解説します。
「不完全な図面」で見積もりを作らされる現場の事情
オープン日だけが先に決まっていて、意匠図(デザイン)や設備図がまだ確定していない状態で入札にかけられるケースは、決して珍しくありません。
- 納まりも設備容量も未確定
壁の仕上げや天井高、厨房機器の仕様すら決まっていない段階では、
正確な拾い出し(拾い見積もり)自体が難しいのが実情です。 - 「見込み」で出すことのリスク
細かく書き込んで金額が上がれば、入札の段階で他社に負けてしまいます。
かといって安く見積もりすぎると、着工後に自社の利益を削って帳尻を合わせることになりかねません。 - 「一式」は現場を守るための書き方
仕様が確定していない以上、数量や単価を細かく明記することは、
後から自分の首を絞めることにもつながります。
曖昧な図面に対しては、見積もりも「一式」として書き、リスクを保全しておく。
これは決して手抜きではなく、現場なりの防衛策です。
設計図書が不完全なときの「見積書」チェック&防衛テクニック
不完全な図面のまま入札に参加せざるを得ない場合、
後から「言った・言わない」のトラブルにならないよう、見積書にあらかじめ仕込んでおきたいポイントをまとめます。
「特記事項」と「前提条件」を書き込んでおく
「本見積もりは〇月〇日受領の図面(未確定版)に基づく。設備容量の変更や下地補修は別途」といった注記を、見積書のどこかに必ず残しておきます。
この一文があるかないかで、後々の交渉のしやすさがかなり変わってきます。
「別途工事」の境界線を文字で残す
図面だけでは追いきれない項目、たとえば電気の一次側引き込み、
B工事区分、既存下地の撤去などは、「別途」として明確にリスト化しておきます。
口頭でのやり取りに頼らず、書面に残しておくことが大切です。
「拾える部分」と「一式」を分けて書く
床面積や壁面積のように図面から拾える部分は数値で示し、
納まりが未定の造作什器や特殊仕上げのみを「一式」とする。
このメリハリをつけることで、見積書全体の信頼性が上がります。
何でもかんでも「一式」にしてしまうと、施主側からも「中身が見えない見積もり」と受け取られやすくなるので注意が必要です。
正直者が損をしないために(施主・設計・施工の理想の関係)
「御社の施工は質が高いのですが、金額が高い」
施主からこう言われる施工会社は、おそらく誠実に見積もりを作っている会社です。
前提条件をきちんと拾い、リスクを織り込んだ結果、金額が正直に反映されているだけとも言えます。
一方、安価で落札した施工会社は、着工後に
「これは別途です」
「ここは追加になります」と積み上げていき、終わってみれば結局高くついていた、
ということが少なくありません。
それでも施主の記憶に残るのは、あくまで入札時点の金額です。
「A社は高かった、B社は安かった」
という第一印象だけが残り、最終的な総額での比較にはなかなか意識が向きません。
「特命(1社指名)は相見積もりより高くつく」というイメージを持たれがちですが、
実際には追加分まで含めた総額で見ると、入札も結局は特命とそう変わらない金額に落ち着いていることが少なくありません。
この点は、施主側にも少しずつ意識してもらえるとよいのではないかと思います。
実はこのあたり、施工会社側にも複雑な思いがあります。
特命でお声がけいただいたときは「特命だから高くふっかけてきているんだろうな、と思われていないだろうか」と気になりますし、
逆に入札で落札した後に最終的な追加でトントンの金額まで積み上がってしまったときは「結局、後から吊り上げてきたな」と思われていないか、内心ヒヤヒヤしているものです。
図面があれだけスカスカだったのだから仕方ない、と自分では分かっていても、
その事情が施主に伝わっているとは限りません。
図面が不十分なまま入札を行うと、こうしたすれ違いがさらに起きやすくなります。
施主にとっても「後から追加料金が発生して予算オーバーになる」というデメリットが生まれるという点では、施工会社だけの問題ではなく、関係者全員にとって望ましくない状況です。
「概算見積もり(予算取り)」と「本見積もり(契約)」を分ける
図面が未完成の段階では「概算」として幅を持たせておき、
設計が確定した段階であらためて正式な「本見積もり」を提出する。
このプロセスを踏むことで、後からのトラブルをかなり減らせます。
とはいえ、「じゃあ設計会社がブレの出ないしっかりとした図面を作ればいい」
と言っても、なかなかそう簡単にはいかないのが現実です。
設計会社側にも、限られた期間や情報の中でまとめざるを得ない事情があります。
さらに施主の側にも「まずは予算感をつかみたい」「概算を交渉材料として使いたい」
という思惑があり、そのためにあえて詳細を詰めきらないまま図面を出してくることも珍しくありません。
結果として、スカスカな図面のまま入札が動き出してしまう、という構図です。
現場目線での発信が、少しずつ業界を変えていく
入札という「儀式」に付き合わされる現場監督の負担を減らすためにも、
最初の段階で見積書の前提条件をどこまで明確に示せるかが、施工管理者としての腕の見せ所と言えるかもしれません。
まとめ
「一式」という表記だけを見ると不誠実に感じてしまうかもしれませんが、
その裏には「不完全な図面で入札せざるを得ない」という現場側の事情があります。
見積もりを受け取る側も、出す側も、この背景を知っておくだけで、
無用なすれ違いを減らせるはずです。特記事項や前提条件をきちんと書き込む習慣を、
ぜひ現場でも意識してみてください。
私の経験がみなさんの参考になればうれしいです。
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