建築において床框を「とこがまち」と読みます。
床框とは床の間と畳床の段差に使う化粧材のことを指しますが、玄関の段差でも使用されます。
段差を解消するための手法で使う、これの材を総称して框と呼んでいるのでしょう
柔軟に物事を考えるのも建築らしいですね
実際、店舗建築において床の段差は框で解消しています。
床の段差=木で作る框=木框「もくがまち」
今回は住宅で使う木框ではなく、店舗で使われる木框の紹介です
建築施工管理の納め方、ディティールを学ぶための書籍はたくさんあるのですが
店舗系の施工管理者用の書籍は皆無です
これは私が知っている知識をまとめるしかない。ちょっとした使命感でこの記事をつくりました
これから店舗の施工管理として頑張る方
先輩の方々にも共感していただけるのではないでしょうか
今回は店舗における木框についてです。
ご一読いただけると幸いです
店舗で使う木框
まず初めに、住宅で使われる木框と店舗で使われる木框は何が違うか
住宅の場合の框:空間の用途が明らかに変わり、高さが変わる時の立ち上がりの材
例)玄関の土間から踊り場へ上がる立上がり
例)和室から床の間への立上がり
店舗の框の役割:共用通路と店舗の床の高さが違う時、の境界部分の見切り材
木框の構造は主に4パターン
- 無垢材
- 突板
- 無垢+突板
- 異素材
順を追ってそれぞれの特性を挙げていきます。
1.無垢材
【デメリット】
- 無垢材は高確率で割れる
- 無垢材なので反る
- 幅広の材が無い
20年くらい前だと幅広の無垢材はよく流通していました事と
勾配についてあまり規制が厳しくなかったこともあり、1/5勾配とかも普通に作っていました。
1/5勾配ですと、幅が120mmくらいなので無垢材もあるし
反りはビスで押さえ込めました。
しかし、最近では木が取れなくなったり、価格の高等の影響で、幅広の無垢材は滅多に見ることはありません。
今となっては高級素材の無垢材を框に使うのはもったいない!
と言う考えがスタンダードです
【メリット】
- 無垢材なので摩耗しても問題ない
- 無垢材なのでノンスリップ加工など、彫ることができる
2.突板
【デメリット】
- 突板は出隅が摩耗により剥げて、下地が露出する
- 突板なのでノンスリップ加工など、彫ることができない(合板が露出してしまう)
【メリット】
- 合板なので反らない
- 無垢材よりも安価
3.無垢+突板
- 摩耗が考えられる部位に無垢を入れ、主な構成は突板仕上げとする
- 高価になるが、対応年数は長い
突板で仕上げたい場合は、弱い部分に無垢材を使います。
突板は摩耗や靴で擦るなどで、剥がれ下地が露出してしまいます。
その弱い部分を無垢材にすることで、摩耗しても無垢材なので見た目も損いません。
下地が露出しているよりは良い状態になります。
4.異素材
- 異素材で考えられるのは鋼材、タイル、左官材
意匠に多大な影響を与えるので、デザインをよく考慮することが大事になる
重要なのは、バリアフリー法を遵守すること
以前より店舗の入口に関して、段差が生じるときは框を設けて勾配で段差を解消してきました。
その頃勾配について、数値の指示はあったものの、「できるだけ勾配を緩くとる」努力をするように。くらいの設定でした
無垢材を使いたいので1/4勾配とかもありました
具体的には100mm幅の木框です
「だって割れちゃうんだもん」くらいの理由でした。
施設側もそれでヨシとしていました。
しかし、バリアフリー法が制定されてからは『1/12勾配』を遵守すること。
となりました。
バリアフリー法の制定
正式には「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 」
はじめはハートビル法(1994(平成6)年)の制定があり、交通バリアフリー法(2000(平成12)年)の制定
似たような法律が2つありました。
ハ ートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 (バリアフリー法)」が第164回通常国会において成立し、2006(平成18)年6月21日に公布、12月20日から施行されることとなった。
鼻先の段差はどうするのか
段差は勾配をつけて傾斜を作ったのでクリアした。
では、傾斜の鼻先は何mmまでがクリアラインなのか
まさか「0mm」なんて馬鹿なこと言わないよね?
傾斜の鼻先を、段鼻(だんばな)と言いますが
段鼻は何ミリにしたら良いのか
この寸法を明確に指示してくる商業施設は、今の所、聞いたことがありません
設計図書に「1/12勾配をとること」と明記していれば通ると思います。
施設側から施工図を求められたことはありません
おそらくですが、できる範囲で段差をなくしてくれれば良い、くらいの認識ではないでしょうか
お子がバギーに乗っているときは8mmくらいの段差で「ガンっ」ってなってました
多分、2〜3mmくらいには納めないとハートフルではないと思います。
まとめ
- 施工サイドから提案する時、納まりの参考としてもらいたい
- 新人監督の方達であれば納め方の種類を覚えてほしい
- デザインをする人は框もデザインの一部と認識してほしい
- 設計図書に「1/12勾配をとること」と明記していれば通ると思います。
- 斜めの線を書いたら終わり。ではない
意匠に多大な影響を与えるので、デザインをよく考慮すること - デザインして引渡したら終わりではなく、メンテナンス性をしっかりと考えてほしい
毎日目にするところであり使うものです、使う人のストレスにならないように設計しましょう
私の経験がみなさんの参考になればうれしいです。
建築現場が良い環境になることを願って!
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