図面の精度は作る図面の種類によって、求められる図面の精度に違いがあります。
設計の立場、施工の立場、製作現場ではどれくらいの精度を求めるのでしょうか
✔︎図面の種類とその役割
内装工事において必要な図面集は、おおきく3種類に分けられます。
- 設計図…デザインを可視化
- 施工図…デザインを具現化するための指示書
- 製作図…具現化するための手法、手順を伝えるための指示書
上記の3種類になるのですが
設計だけを行うのであれば、設計図となり、工事の施工だと施工図、製作図までです。
設計施工で工事の施工まで請けるのであれば、設計図、施工図、製作図のすべての図面に関わります。
この役割分担がわかっていると、各担当者との付き合い方が分かるきっかけになるかもしれません
設計者で施工図を理解できている人って、実は少ないと思います
なぜ設計者が施工図を理解していないと思うのか
私は設計者と打合せを重ねる中で、「あ この人わかっていないかも」と思う瞬間があります
確認のため、設計者の理解度を確認するために、施工図を1枚作り提出してみます。
その回答とリアクションで判断するのですが、その手段は
★分かり易いところをワザと間違えて描いてみる(形状の違い)
・例えば、通路幅やカウンターの大きさ
こんなところ間違えないだろ!って所をワザと間違えてチェックされるか確認します。
★全然違う仕上げで書く(文字を読んでいるか)
これは引出し線で仕上げを明記する際に、しっかりとチェックいているかの確認です。
・例:(正)SUS HLステンレスヘアライン 、(試し)粉体塗装仕上げ
普通ですと???何この仕上げ??? となる所です。
ここら辺をノーチェックで承認してしまう設計者が実はよく居ます。
「もー施工図なんてよくわからないし、ちゃんと描いてある様に見えるしOKだろ」
実際に居ましたので恐ろしいです。
「実はよく分からないので、信用しているのでYOUさんにお任せします」
なんて強者もいました。
恐ろしや…
設計者にも施工図を読める力を養ってほしいですね
現状では設計者が読めるように、設計者用の施工図面を書き直すこともあります…
そうは言っても、私たち施工者は誰が見ても「分かる施工図」を目指し努力を続けましょう。
設計者が施工図を読める様になったら、きっと最強ですよ
追い越されてたまるか!
☆設計図の役割
1 ↓ | 設計者※1 | 施主の意向を汲み取り図面を作成する | 作成 | 施主のイメージを可視化する人 |
2 ↓ | 施主 | 依頼通りのものが計画されているか | 確認・承認 | 依頼人 |
3 ↓ | デベロッパー | 施設のレギュレーションに適っているか | 確認・承認 | 計画がふさわしいかジャッジする |
4 | 施工者 | 見積もりを作成する 施工図、製作図の作成、現場施工 | コスト 製作 | 具現化する人 |
設計図の役割は施主の意向を汲み取り可視化することです
可視化したことで、第三者に伝えることや、施工見積りを作成することができるので、実現させるための第一歩となります。
※1:設計を行う人の中には「意匠設計しかしない人」と「設計監理までやる人」がいます。
「意匠設計しかしない人」高確率で施工図を読んで理解することができません
「設計監理までやる人」施工図を理解しチェックまで出来る
現状では設計者が読めるように、設計者用の施工図面を書き直すこともあります…
☆施工図の役割
1 ↓ | 施工者 | 施主・設計の意向を汲取り図面を作成する | 作成 | 施主のイメージを可視化する人 |
2 ↓ | 現場職人 | 依頼通りのものが計画されているか | 現場施工 | 依頼人 |
3 ↓ | 設計者※1 | 施工図を読める人と読めない人がいる | ー | 施工図が読める人はチェックする |
4 | 施主 | 竣工図書として受領 | 受領 | 依頼人 |
4 | デベロッパー | 施設のレギュレーションに適っているか | 確認・承認 | 計画がふさわしいかジャッジする |
※1設計者:意匠設計者は高確率で施工図を読んで理解することができません。
施工図の役割は、設計図通りに建築物を作り上げる為の設計図です。
施工者への指示は「施工図」にて行います。
☆製作図の役割
1 ↓ | 施工者 | 施主・設計の意向を汲取り図面を作成する | 作成 | 具現化する人 |
2 ↓ | 製作工場 | 見積もりを作成する 実施製作図の作成、製作、納品 | コスト 製作 | 具現化する人 |
3 | 設計者※1 | 施工図を読める人と読めない人がいる | ー | 製作図が読める人はチェックする |
※1設計者:意匠設計者は高確率で施工図を読んで理解することができません。
製作図は、施工者から工場へ指示を出すための設計図となります。
製作を請けた側は、実際に作るための図面を描きます。そして、自分が間違えていないか確認するためにそれを施工者へ提出します。
間違ったものを作る訳にはいかない!
実は意匠設計だけを行う人がいます。
設計を行う人の中には「意匠設計しかしない人」と「設計監理までやる人」がいます。
「意匠設計しかしない人」高確率で施工図を読んで理解することができません
「設計監理までやる人」施工図を理解しチェックまで出来る
私の感覚になってしまいますが
意匠設計しかしない人はデザインが計算され尽くされている
例えば、その設計には裏の裏の考えがある、計算高いなど、そんな感触です
悪くいうと、夢見がち、現実離れしていてコストを度外視している
お〜なるほど!すごいこと考えているなぁー
と、デザインが計算されている
設計管理までやる人の図面は施工時のことも考えているので、図面が読みやすい
出来ることと出来ないことがわかっているので、現実的なデザインとなることが多いです。
悪くいうと、無難、平凡なデザインになってしまう
攻めたデザインは出来ない
というか、「しない」ですね
どちらも一長一短だと思います。
「デザインをやりたいなら現場のことを知る必要はない」という考えのデザイン会社も結構あります。
まぁ 分からなくはないですが…
私の感覚では現場を考慮するデザイン会社の方が、この厳しい時代を生き残っていると感じます…
✔︎図面に求められる精度
単刀直入に、設計図に求めるのは
大事にしている寸法です、例えばカウンターの奥行きは絶対に守ってほしい
引出しの内寸など、守りたい寸法です。
設計者が図面を書く際に既製品など、各メーカーでCADデータを無償配布しており
作図する人はよく使用しているはずです。
その配布データはdxfやdwgデータなのですが、CADに取込むと精度が落ちてしまいます。
よくあるのが、0.999998です。
実際の施工で0.999998mmの仕事をするのは不可能です。
これはデータの扱い上仕方のないことなので、施工図では0.999998mmは1mmに修正します。
なぜか設計図を書く人達は0.999998を気にも止めません
そうなるとmいくら足し算を行なっても0.999998という不思議な数字が出てくるのです。
施工者は0.999998なんて現実味のない寸法は使いません
本当はちゃんと直して欲しいですけどね
描く人 | 表現内容 | 求められる精度 | |
設計図 | 設計者 | デザインを可視化 | トータルが合っていればヨシ |
施工図 | 施工者 | デザインを具現化するための指示書 | 逃げを考慮した上で、小数点一位 0.0mm 0.5mm 現場は暗いので細かい寸法は間違いの元 |
製作図 | 施工者 | 具現化するための手法、 手順を伝えるための指示書 | 小数点一位 |
サッシ図など、納まりがシビアなものは小数点第2位くらいまで必要となります。
まとめ
設計者、施工者、職人、3者共にみんな物を作る人です。
間違えたから作り直す。そこにお金が掛かっても仕方がない
そう思うのは実際に自分で物を作っていないからだと思います。
せっかく考えたものが図面に反映されていなくて、全然違うものが出来てしまった
あの苦労は何だったのか、せっかく作ったものが必要とされない虚しさ
そして、また同じものを作らないといけない、図面が間違っていたために
作り手としては作るテンションが全然違います。
これはお金の問題ではないんです
次の人へ正確に伝えるために、情熱を持って図面に取り組みましょう。
自分が考えて描いたものが形になっていく
せっかく考えたのに施主の要望と全然違う図面描いてた…
あの時チェックしていれば防げたかも…
忙しくても、急がば回れです
私の経験がみなさんの参考になればうれしいです。
建築現場が良い環境になることを願って!
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