【図面のキホン】 施工者が作成する「製作図面」と「施工図」について

図面

私は店舗の内装工事をメインに現場管理をしています

新築住宅や建築物の現場管理とは少しちがう仕事内容になると思います。
建築物と内装はそもそもの規模が違うので当たり前なんです

今回は、施工者が各現場ごとに作成する「図面」についてまとめていきたいと思います。
同業者の方々も大体はこの考え方だと思いますので
お施主の立場の人、これから店舗内装に関わろうと考えている方々の参考になれば幸いです。

建築設計と店舗設計の違いを考えていきます

【図面のキホン】 図面の向き
施主さんと打合せをするときに平面図をクルクル回して入り口はどこだー と探すことがあります 建築図書の配置図や案内図は北が上に来るように図面レイアウトを決める。という基本概念がありますが詳細な平面レイアウト図は見やすい方がいいと思います。 平...

建築家 と 建築士 と 施工管理技士

建築物の場合
建築家意匠設計を行います、いわゆる建物のデザインです。
建築家は資格を持っていなくてもなることができます

意匠設計をもとに実際に建築物をつくるための実施設計を行うのは建築士です。
こちらは国家資格が必要

実際に現場に立ち職人さんたちと作っていくのが施工管理技士となります。
こちらも国家資格が必要です。

建築家=建築士
と思いがちですが、建築家は国家資格がなくてもなれるんです
建築士は国家資格が必要な職種となります。

建築家が資格をもってないの?!

大丈夫です、意匠デザインなので問題ないです

建築士が作成する実施設計とは、意匠設計を実現させるため
実際に現場を動かし作り上げていくための精度、根拠を持った図面となります。
重要なのは法令に則った設計ができるかです

【設計者とは】意匠担当の建築家、実施設計の建築士、一般的にどちらも設計者と呼ばれます

施工管理技士は実施設計に基づき施工図書をつくり、施工の計画や
意匠を実現させるための新しい工法の確立、現場を進めるための発注
そしてメインは現場に立つことです。
施工者と呼ばれます

新しい建物ができると、有名な建築家は意匠性を讃えられメディアによく取り上げられたり
建築会社は施工の精度や安全性の素晴らしさを讃えられています。
これはたぶん皆さん想像しやすいと思います

✔︎店舗の場合になると全然変わってしまう

店舗建築になると登場人物が変わります
建築物と比べると規模がぜんぜん違うので当たり前かもしれないですね
登場するのは、意匠デザインの設計者施工者の2者のみです

両者とも資格は必要ありません
必要がないので誰でも設計者を名乗ることが可能です。
建築では建築家や建築士が設計を行っていましたが、店舗では特に決まりはなく誰でも設計者を名乗ることができます。

施工者の会社として「建設業の許可」が必要です。

YOU
YOU

私は現場管理がメインですが、兼任で 設計者として物件をすすめることがあります

[正攻法]設計者意匠デザイン・実施設計を行い、施工者施工を行う

[最近の現状]設計者が意匠デザイン、施工者は施工を行う

実施設計は?!

YOU
YOU

なんと実施設計が無いんです!キッパリ

実施設計が無いと言うのは語弊がありました (イイスギデス・・・
一応出店施設側へ提出するために実施設計をつくります。施設側の許可承認ももらいます。
これは意匠設計にウェイトがある内容でかまいません

施設側も納まりや細かい図面は必要ないのです

YOU
YOU

ここで提出されるのが「実施設計」
私たちが欲しい作れる図面ではない

本来建築するために必要な 実施設計作るための図面がない が正しいです

作れる図面を書く設計者もちゃんといます
しかし困ったことに意匠デザインまでしかできない「設計者」が店舗の業界には多いんです。
要求される図面がそこまでの内容を求めていないなら、必然です

YOU
YOU

余計な労力は使いたくないですから

【メリット】資格が必要ないので誰でも即日設計者になれる

【デメリット】国家資格の保有者が少ないため、安全面を無視した設計が多い

※私見です、ご了承ください

最終的に求められる図書が意匠デザインだけでいい
あとは施工者がなんとかしてくれる





内装業界はこんな感じです

✔︎実施設計はどこへいった??

一昔前は設計者からかっこいい実施設計が出てきました
図面のクオリティ、納まりがかっこいいんです

図面は今のようにCADではなく手書きでした。
手書きなのでペンのタッチで設計者の想いがダイレクトに伝わってきました

両者に意思の疎通があったように思います

”現場より”
”現場より”

「なるほど、ここはこだわってるのね 気をつけるポイントだ」

「試行錯誤した形跡があるな、いい納まりがあるから提案してみよう!」

また、当時の設計者は今と違いアナログ環境だったこともあり
電話だと伝わりづらく、「現場見たほうが早い!」「行くよ!」とのことで
よく現場に足を運んでくれました。




実際の現場を見ることにより、途中段階だからわかる「図面と現場の相違」や「できあがりの現実」を体感していたことが、より精度が高く説得力がある図面が書けた要因だと思います。





現在デジタル環境が整いリアルタイムで現場を見ることができ、図面もデータ化しコンビニでプリントすることもできます。

設計者が現場に来るタイミングは最低2回
1回目はデザインするときのために、周囲の環境を確認する
2回目は引渡しの時に現場に来る
くらいです。

YOU
YOU

寂しいもんです…

そんな設計者は納まりがわからないので、実施図面には描かない、ごまかしちゃう
そんな図面で許可がでるのでイイんです





でも、施工者がほしいのはリアルで作れる図面です。

※私見ですが…
やはり現場を見ないと生きた図面は描けないと思います。
現場を見ることでしかわからない、作り手ができること・できないこと がわかるはずです

設計者の図面は内容が薄い

内容が薄い図面だと何がイケないのか

  • 作りたいモノがわからない
  • どう見せたいのか
  • 何をしたいのか

図面はイメージを形にするために絶対必要なものです
図面からイメージするのは施工者の仕事ですが、作り手にイメージが伝わらない図面ではなんの意味もありません

設計者が作れる図面を描けない理由は、ズバリ時間がない
時間がないんです

  • 提出までの期間が短すぎる事
     →時間に追われて現場を見になんていけないよ!
      →生きた現場を見ることが出来ないので経験値があがらない
       →結果、意匠デザインだけで終わってしまう
        →お、オッケーがでた! よし次の仕事請けられる!
    ↑提出期限が短い、負のスパイラルが始まる

提出とは出店するデベロッパーへの設計図書の提出期限であったり、施工者へ配布するための設計図書の期限です。
これはクライアントが出店を決めてから開業するまでの期間が短すぎることが原因です。





設計者としては「もっと考える時間がほしい・・・・」と思っています
そうすればもっといいデザインができるはず!
設計者としてはいいデザインをクライアントに提供することこそが本来の狙いであり
提出期限に間に合わせることではないのです

しかし、どんな仕事でも必ず納期があり、それを反故にすることはできません

YOU
YOU

仕事なんでね、納期が大事なんです

設計者は泣く泣く設計を切り上げます
期限に間に合わせるために揃えた設計図書は内容が薄くてもよいのです

とりあえず提出できれば「セーフ」
許可が出ればオッケーとりあえず納期守った!となります

無いよりあったほうがマシ
最終のゴールは店舗のOPENなので期日は決まっています

そうなると内容はともかく、出てきた図書で周りは動くしか無いんです





「無いよりあったほうがマシ」そんな理由でデベロッパーや施工者は動きます。
こうして一旦は設計者の手を離れたるです
設計者としては名残惜しいかもしれませんが、これで他の物件に移れます

さぁ現場は大変です
収まりもこだわりもない図面が出てきた挙げ句「これ以上の図面はもう出てきません」と言われ
見積もりや製作、現場を進めていくのです

✔︎内容を補填するのは『イメージ写真』

内容が薄い設計図書によく添付されるのが
伝家の宝刀『イメージ写真』です

添付されたイメージ写真と一言

こんなイメージで、色はこんな感じで

イメージ写真が具材であるならば、言葉は調味料でしょうか
この具材と調味料をもとに私達、施工者はお料理を作っていきます。

なんとか できちゃうんだよなぁー

これに味をしめてしまうと徐々に図面の内容が薄くなり
それでも形になりOPENしていくという現実があると、図面は内容が薄いものが通常へとなっていきます。



写真から最終形態はわかるのですが、詳細がわからないので苦労します

素材から方法まで全部こっちまかせなんだから

そもそも施工者が図面を書く必要があるの?

絶対に必要です!
施工者も図面を描きます

図面は設計者が描くものではないの?

実施設計を元に図面を描くのですがその内容は

  1. 実施設計の検証の為
  2. 現場寸法を反映した施工図
  3. 発注材料の算出の為
  4. 製作寸法を決める為
  5. 納まり図

大前提として設計者の図面が元になります。

1と2は設計承認をもらうため設計者に提出しますが
3と4は求められない限り提出することはありません
そして、ほぼ絶対と言っていいほど出さないのが5の「納まり図」となります

私たちが「図面をください」と言うのは、図面がなければ私たちの仕事ができないからです。

✔︎本当は見せたくない「納まり図」

納まり図は私たちが長年培ってきた技術の結晶です。
中にはありきたりな納まりもあるので一概には言えませんが
そのほとんどが、それぞれ施工者が悩みながら絞り出した納まりです
同じ会社内でも納まりを教えない。なんてこともあるくらいです

私が驚いたのが、ある有名な設計事務所を謳っている先生と仕事をした時です。
先生も初めての試みだったそうで意匠図しかもらえませんでした。

いやぁ〜 はじめての試みだよ〜!
ハハハッ

意匠図以降の図面は出せない キッパリ
とのことでした


私としてかなり難しいデザインだったのですが、
なんとか絞り出した納まり図で承認をもらい実現させることが出来ました
工場の方達も苦労して作ってくれたおかげで、出来たときはかなり感動しました

絞り出した方法は、何箇所かの工場に相談しました
さすが工場は色んな取引先があるので納まりの宝庫です
ただし、この案件に相応しい納まりは私が決めるしかないのです
工場から吸い上げた情報を試行錯誤して作り上げました


その後の別の機会で先生と仕事をする機会があったのですが
まさか私の納まり図がそのまま先生の図面に使われていました
びっくりしました、前回の案件の時なにも言ってなかったのに!
ノーリアクションだっただけに、まさかそのまんま使う?!
プライドが高い先生なのでびっくりしました

ここまで描かなくてもイケるんじゃん!

『そんなことよくある話だよ』と言ってしまえばそれだけのことなんですが…
寂しいな…と思う次第です

これが「納まり図」を外に出したくない理由です。

設計者とは言われていますが
店舗の設計者が行うのは意匠設計であり意匠デザインなのです。

店舗の設計者が描く図面では店舗はつくれません
いや、作れているのですが
私達施工者が作るための図面を作成しているんです

意匠デザイナー と 施工者の協業作業

建築家が店舗設計をすることもありますが、その場合は私たちがしっかりとサポートします

YOU
YOU

怒らせるとこわいので…

怒らせるとこわいのもあるのですが、
本当は理詰めで迫ってくることが多いので対応が面倒なんです

もちろんそんな建築家ばかりではありません
逆に開き直って「わたしは意匠デザインを担当しますので・・・」と最初に言ってくるかたもおり
その場合は設計補助として設計から一緒に進めていくこともあります

YOU
YOU

ストレートなので関係がわかりやすいです

得意分野の棲み分けができると、もっと効率的でいい仕事ができると思うのですが

なかなかそうもいかないのが辛いところです






今回は愚痴になってしまいました・・・
内容もうまくまとまっていませんが、後ほど見直します!

では、私の経験がみなさんの参考になればうれしいです。
建築現場が良い環境になることを願って!

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