建築施工管理の納め方、ディティールを学ぶための書籍はたくさんあるのですが
店舗系の施工管理者が読むための書籍は皆無です
これは私が知っている知識をまとめるしかない。ちょっとした使命感でこの記事を作っています
これから店舗の施工管理として頑張る方や
先輩の方々にも共感していただけるのではないでしょうか
今回は造作の納まりを考える順番について書いてみました
ご一読いただけると幸いです
造作は何よりもまず「逃げ」を探す
壁の中に入れる造作や、壁に付ける造作の納まりを考えるとき、
私が最初にやるのは「逃げを探すこと」です。
寸法のずれや、仕上げの厚みの差、下地のゆがみ。現場ではどうしても誤差が出ます。
その誤差をどこで受け止めるかが決まっていないと、造作は現場で入らない、
または隙間が出る、という結果になりがちです。
「逃げ」と「逃げ方向」は違う
ここで、この記事で使う言葉を整理しておきます。
- 逃げ:寸法のずれや取り合いを吸収するための余裕を、漠然と考えておくこと
- 逃げ方向:その余裕を「どちらへ、どう逃がすか」まで決めてあること
「逃げを見ておいた」だけでは足りません。逃げ方向まで決めていないと、
現場で「結局どっちに逃がすの?」となって手が止まってしまいます。
この記事では造作の納まりを考える順番を、
逃げ方向を決めるための確認として整理してみます。
納まりを考える順番
私が[壁-造作-壁]の造作を考えるときは、次の順番で確認しています。
- 基本設計の確認
- その造作は支給か、制作か
- 壁と造作の構成(壁に何面、接しているのか)
- 天井と床に接しているのか
- 素材(木か、金属か)
- 間接照明・電気機器・コンセント・給排水設備などを内蔵するのか
- 壁の仕上げ
この中で一番大事で、一番間違えやすいのが③と④です。
似ているようで、実は別のことを確認しています。順番に見ていきます。
①基本設計の確認
まず、設計がその造作をどう考えているかを確認します。図面上の位置、大きさ
ここがはっきりしていないと、逃げ方向を決める前提が定まりません。
設計の意図が図面から読み取れないときは、この段階で設計者に確認しておくのが結果的に近道です。

たまにいるのが、「図面通りにやった」
納まらないのは設計のせいだ
直してもいいけど、追加な
②支給か、制作か
造作が支給品なのか、制作するものなのかで、逃げの考え方が変わります。
ここでいう支給品とは、施工会社が製作段階で管理しない、設計会社や施主から、
出来上がったものが納品される物のことです。
制作する造作であれば、施工中の壁の内寸を見ながら、「壁内寸が○○mmだから、造作は○mm逃げて作る」と先に決められます。
支給品はそれができません。出来上がったものが納品されるので、施工管理が実物を採寸できるのは、納品された瞬間になります。
納品日が実寸の確認日になるのは、正直なところ怖いものです。
そのため、造作が支給品になる場合は、いつもより大きめに逃げを取っておく必要があります。
ただし、同じものが他の物件でも繰り返し納められている場合は、前回と全く同じものが納品される前提で、逃げを小さくすることもできます。
支給か制作かで、逃げをどれだけ取るかの方針を決めておきます

経験が生かされるわけです
③壁と造作の構成:逃げ方向は何方向あるか
造作が壁に何面接しているかで、逃げ方向の数が決まります。
接する面が増えるほど、逃げ方向は減っていきます。
壁際の造作
背面だけが壁に接している造作は、左右の2方向が逃げ方向の候補です。

対面式の造作
壁に側面で接する造作も、同じように図の上下の2方向があります。

コーナーに入る造作
コーナーに入る造作は、逃げ方向が開いている片側1方向だけになります。

埋込の造作
壁に3面囲まれた凹みにはめ込む造作は、逃げ方向がありません。

はめ込むだったり、埋め込むと言います

片側がドア
見落としやすいのが、隣にある開き戸です。
壁との関係だけを見れば逃げられる側でも、戸の可動範囲にかかると、その方向は使えなくなります。
図の例では、戸と反対側の1方向だけが逃げ方向になります。

両側逃げなし
さらにコーナーに入る造作の隣に戸がある場合は、逃げ方向がなくなります。

逃げ方向がない造作は、ミリ単位の精度で作る必要が出てきます。
誤差を吸収する別の手を、先に考えておく必要があります。
具体例は④で紹介します
④天井・床に接しているか:逃げ方向と工程が変わる
③が「横から見た逃げ方向」だとすると、④は「縦から見た逃げ方向」です。
同じ壁付けの造作でも、天井や床に接しているかどうかで、納まりも工程も変わります。
床置き造作
床に置く造作は、天井側に逃げ方向があります。

天吊り造作
天井から下げる造作は、床側に逃げ方向があります。

持出造作
壁だけに付く造作は、上下の両方に逃げ方向があります。

空中に浮いているやつです

壁面造作(天地いっぱい)
床から天井まで通す造作は、上下とも逃げ方向がありません。
天井高や床のレベルのばらつきを、そのまま造作の寸法で受けることになります。

壁面収納とかでよく見ますね

逃げ方向次第で、工程も変わります。
仕上げの前後どちらに造作を入れるかで、先に決めておくことが変わってきます。
工程の具体例:仕上げと造作の順番
仕上げと造作を納める順番で見ると、次の2通りがあります。
A.先に仕上げて、逃げを見てから造作を納める
先に壁を仕上げてから、残った逃げを実際に見て、造作を納めます。
逃げの隙間は、フィラーやコーキングで処理します。

B.逃げがあるうちに造作を納めて、仕上げでふさぐ
逃げが残っているうちに造作を納めておき、
仕上げるときに仕上げ材を造作に「ドン」と突き当てて、逃げの隙間ごとふさぎます。
仕上げ材は逃げより厚く取り、逃げの中には仕上げ材を入れません。

どちらの順番で進めるかによって、逃げの取り方も、先に決めておくことも変わります。
③で見ているのは壁との関係(横方向の逃げ方向)、④で見ているのは天井・床との関係(縦方向の逃げ方向と工程)です。
似ていますが、別々に確認しておくと抜けが出にくくなります。
⑤素材:木か、金属か
造作の素材によって、現場での調整のしやすさが違います。
木であれば、現場で削って合わせる余地があることが多いです。
金属は現場で調整しにくいため、最初から逃げ方向と逃げの量を決めておく必要があります。
⑥内蔵物:照明・電気機器・コンセント・給排水設備
間接照明や電気機器、コンセントなどを内蔵する造作は、器具や配線の分だけ逃げが減ります。
給排水や設備を内蔵する場合は、配管の取り出し位置や、あとから点検できるかどうかも関わってきます。
内蔵物があると、逃げ方向を決めた後でも条件が変わることがあるので、設備側の担当者とも早めに話しておくと安心です。

ビルトインですね
⑦壁の仕上げ
最後に、壁の仕上げです。左官、タイル、クロスなど、仕上げ材によって厚みが違い、
必要な逃げの量も変わります。
足元の軽鉄ランナー部分でボードがしなって膨らむことや、出隅の塩ビコーナーでパテ仕上げをすると壁が厚くなることも、逃げの量に影響します。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ
造作の納まりは、まず逃げを探すこと。そして、逃げ方向まで決めておくこと。
今回の7つの順番は、すべて「逃げ方向を決めるための確認」です。
特に③の壁との関係と、④の天井・床との関係は、似ていますが別のことを見ています。
現場で「入らない」を起こさないために、図面の段階で逃げ方向を決めておく。
この記事が、その一助になれば幸いです。
実際に逃げ寸法を考えていなかったときに何が起きるのかは、こちらの記事に書いています。
私の経験がみなさんの参考になればうれしいです。
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